Tokyo(仮) 短編小説に挑戦
「Tokyo」
オンラインゲームのOFF会でモモとは出会った
当時のバイト先が彼女の家に近かったこともありOFF会の一週間後に二人で居酒屋で待ち合わせた
その日から俺は彼女の家に住みこむようになり、彼女が夜の仕事に出かけている間
彼女のキャラクタを育てた
ゲームのキャラクタのレベルを一つ上げる度に彼女は俺にお小遣いをくれた
俺はバイトへ行かなくなった
モモとは時々セックスをした
彼女の手首には古傷があったが今はもう前向きに生きているという
机の引き出しには精神安定剤がごっそりと溜めこんであった
彼女はコレクションだと言った
時折、コンビニに行く時でさえ「行かないで」と言って泣くことがあった
孤独な都会の暮らしのなかでこうして他人に必要とされることは嬉しかった
俺はせっせとゲームに精を出して小さな貯蓄を増やしていった。
ギルドの仲間たちは「最近◯◯INしないね」と俺の消息について俺に尋ねたりしたが
俺は「知らないお☆」とキーを叩いた
OFF会に来ていた奴で1人モモにちょっかいをかけてくる奴がいた
他のプレイヤーに見えない個人チャットで「モモちゃん一人暮らしなんだってねえ?」と俺の操るモモのキャラクタによく話しかけてきた
最初は爆笑していたがだんだんうっとおしく思えログインする回数が減った
何気なくモモが仕事をしている店のホームページを検索してみた
メイド服を着て笑っていいる彼女がいた
好きなタイプの異性に「やさしくておもしろい人」と書いてあった
俺は退屈していたのかもしれない
なぜかふと店に行こうと思ってしまった
レベル上げの報酬は溜まっていた
長い商店街を駅に向かって歩いた
迷惑メールが来たので「シネ」と返したらこのアドレスには返信出来ませんというメールが返ってきた
それから実家から着信があったが出なかった
切符を書い改札を抜けると、ホームまで人が溢れかえっていた
人身事故の影響で電車が止まっていたようだ
どこかで肩がぶつかったと喧嘩が始まった
ホームを目指す群衆は少しずつ少しずつ階段を昇り歩みを進めた。